9.ホスピタル・サニテーションとしての清拭・清掃作業
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 病院での清拭作業は、単に拭き取るだけの作業ではなく、特に清潔区域、準清潔区域では、消毒剤を使用した殺菌的な清拭が必要になってきます。このとき、重要なのは、耐性菌を如何に減らすかということになります。
 一般的に生物は一定の環境条件において、最も適したものが優先的に生き残ってくることが知られています。このことは、細菌であっても同じことであって、漫然と同じ消毒液を使って同じ方法で清拭していると、特定の細菌が残っています。
  要するに、いつも同じ条件を環境に与えてはいけないということです。 先ず有機物と汚れを物理的に除去することです。有機物の残存の場合、消毒剤と微生物が接触できないため、消毒効果が期待できず、耐性菌となる場合があります。
  
9−1 清拭するときの基本と注意事項
   清拭とは、拭き取ることより汚染物を取り去り、清浄をするとともに洗剤及び消毒剤による、除菌及び消毒効果を期待する方法で、洗剤及び消毒液をモップやスポンジにたっぷり含ませて清拭することが必要です。薬液量が不足すると消毒効果が十分に上がりません。
  
  @ 作業時は手袋・大型マスク・帽子・長袖のシャツ・長ズボンを着用し、作業開始直前に履物の上から清潔な足カバーを履きます。雑巾を使用するときは厚手のゴム手袋を着用します。清拭作業では、一般にゴーグルは不要です。
  A 清拭するとき、モップまたは雑巾を往復させてはいけません。このような拭き方をすると、一旦、拭き取った汚染を再び塗りつける結果となり、汚染をかえって広げる場合があります。清拭するときは一方向へ拭き切りにしていくことが重要です。
  B 拭く順序は風上より風下側へ、また、部屋の奥から出入口の方向へと拭いていくのが正しい方法です。例えば、空調設備のある部屋では、空気の吹出口より吸込口へ、または、部屋の出入口の方向へと清拭作業を進めます。 ただし、危険な感染性の微生物によって汚染されていることがハッキリしている場合は、手前から拭いていき、感染しないように注意します。実際、このようなことは滅多にありません。
  C 清拭中は、壁や手摺りなどに素手で触れないよう注意するとともに、清拭の済んだ場所を再び踏んだり、触ったりしてはいけません。また、足カバーが潤さないように注意してください。
  D 床へ落とした雑巾は、決して拾って使ってはいけません。
  E 手術台、ストレッチャー・ベッド、その他の医療機械を清拭するときは、消毒液に雑巾を十分浸し、軽く絞って横拭する。このとき、雑巾を強く絞ると空拭きの状態となり、消毒ムラを生じるだけでなく、消毒液が速やかに乾燥して、消溝効果が十分に現れません。
  F 清拭では、水または洗剤を使用する以外に、塩化ペンザルコニウム(BAC)、グリシン系両性界面活性剤(TG)、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)などの消毒剤を使用します。上記の薬剤は、副作用が少なく使いやすい消毒液ですが、殺菌力が不安定で、耐性菌ができやすいのが欠点です。さらに、これらの消毒剤は洗剤と一緒に使用すると消毒効果がなくなってしまうので注意することが必要です。
  G ベッド棚、ベッド用のビニールシート、仕切用のビニールカーテンなど、患者の体に直接触れるものは消毒用エタノールで清拭します。
 
9−2 モップやスポンジの使い方とメンテナンス
  @ 種類の異なる洗剤、または消毒剤を使用する場合は、それぞれ専用のモップヘッドを使用しなければなりません。
  A モップの柄は、グラスファイバー製のものを使用し、決して木製のものを使用してはいけません。木製の柄は微生物が付着しやすく、取れにくいからです。
  B 床上50cm位の低い場所を清拭するときは、柄の短いモップを使用するなど、楽な姿勢で作業できるように工夫します。
  C モップまたは雑巾を使用するときは、モップヘッドをあらかじめ消毒液に1時間以上浸し、布生地に消毒剤を十分吸着させた後、新しい消毒剤を使用して清拭します。
  D モップヘッドは使用した後、直ちに石けんで洗濯し、71℃の温湯で25分又は80℃の温湯では10分加熱し、水洗いした後に遠心脱水し、できるだけ速やかに乾燥させます。なお、一週間に2回、0.1%次亜塩素酸ナトリウム液によって漂白を兼ねた殺菌を行います。また、クリーンル一ムなどで使用する場合は、オートクレ一ブで滅菌しても構いません。モップのメンテナンスも、いつも同じ方法で行っていると、特定の菌が残ります。
  E モップの保管モップを保管するとき、いつまでも湿ったまま放置しておいたり、狭い収納箱を閉め切って、風通しの悪い状態で重ねて保管していると、細菌が増殖したり、カビの温床となるので、素早く乾燥させることを心掛けねばなりません。特に、冬期は室温だけでは乾燥しにくく、湿ったままのモップ糸にグラム陰性桿菌が増殖することが知られているので、風通しの良いところで乾燥させるか、ドライヤーなどで加熱乾燥させます。
清潔にしたモップ、バケツ、モップリンガー、雑巾、スポンジ、ブラシなどは全部まとめて専用トロリーにセットしておき、何時でも使えるよう、廊下の隈などに常駐させておくのが好ましい方法と言えます。
 
9−3 モップ清拭法
  @ 湿式モップによる清拭方法(湿式清拭法)
   
a. モップ清拭(通常のモップによるランダムな掃除で、清拭法の名称はない) 1本のモップで、いくつもの部屋を無秩序に拭いていく方法で、特に決められた方法はありません。モップの洗浄も特に気をつけることなく、適当にーつのバケツで何回もモップを濡らし、手で絞るか、モップリンガーで絞りながら次々と拭いていく方法です。
これには、水拭きの方法と消毒剤を使用して拭く方法とがあります。
***通常の清拭方法であって、病院の一般区域で、特に衛生的な要因を含まない部屋の掃除に使用する方法。***
▼ハイモップシステム-紹介ムービー

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b. 1モップ・1バケツ方式(1モップ法)
1部屋について1本のモップを使用して清拭する方法で、1本のモップに一個のモップリンガー付バケツが必要です。
部屋数に相当するモップヘッド、バケツ、モップリンガーを用意します。かなり広い部屋の清拭を行うときは、もう1組のモップセットを用意し、1つの部屋を2ヵ所にわけて清拭します。
***一般区域の清拭に使用する方法。***
c. 1モップ・2バケツ方式(ダブルバケツ方式)
1部屋について1本のモップを使用して清拭する方法ですが、1本のモップにモップリンガー付バケツが2個必要です。
あらかじめ、部屋数に相当するモップ、バケツ、モップリンガーを用意します。消毒剤を入れたバケツはbP、bQの順序を決めておきます。
まず、モップをbPをバケツに浸して、よく洗った後に強く絞ります。次にモップをbQバケツに浸し、洗剤及び消毒剤を十分吸着させてから緩く絞り、部屋の5〜6uを清拭します。
同様にbPバケツとbQバケツを使い、次々と清拭していきます。
***主として清潔区域・準清潔区域の清拭に使用する方法。***
d. 2モップ・2バケツ方式(2モップ法)
1部屋について2本のモップを使用して清拭する方法。それぞれのモップに1組のモップリンガー付バケツが必要です。
あらかじめ、部屋数に相当するモップ、バケツ、モップリンガーを用意します。バケツには、それぞれ洗剤及び消毒剤を入れておきます。
モップもバケツも、それぞれbP、bQの順序を決め、バケツには、それぞれの消毒剤を入れておきます。まず、bPのモップを使用して5〜6uを清拭したものをbPのバケツで洗浄した後、モップリンガーで軽く絞って次ぎ次ぎと拭いていきます。
次に、bQのモップとbQのバケツを使用し、bPのモップを横拭きした場合は、bQのモップでは縦拭きします。
***清潔区域の清拭に使用する方法。バイオクリーンルームなど、特に確実な清潔度を必要とする高度清潔ゾーンで使用する清拭法として考え出された方法。***
汚れを残さない一方向への拭き上げ

※ウェットフロアサインは、両端だけではなく、工程の間に出入口がある場合は、そこにも立てます。
 
9−4 モップや雑巾のゾーニング
 

上拭き用と下拭き用モップや雑巾は、カラーゾーニングして使い分けるようにします。 上拭きの区域と下拭きの区域は、清拭するものによって、それぞれ異なっています。例えば、手術台であれば台の部分が上で、足の部分が下となります。また、便器であれば蓋と腰掛けの部分が上で、それより下と便器の内部が下となります。上下の限界がハッキリしない場合は、床上約50cmより上側を上とし、それより下側を下と考えて使い分けます。
モップまたは雑巾のカラーゾー二ングにおいて、上拭き用は青色や緑色を使用し、下拭き用は赤色や黄色などの濃い色として区別するのが一般的です。

  上拭きの区域 下拭きの区域
ベット
床頭台
器機・装置
壁(腰板付)
壁(腰板なし)
便器
その他のもの
ベットの台の上
床頭台の銅と合板上
接地金具部分より上
腰板より上の部分
床面より50cmより上
蓋と便座
上記に準ずる
台の下側と足の部分
台の下側と足の部分
接地金具部分
腰板部分
床面より50cmまで
便器の内側と便座より下の部分
上記の準ずる

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